……なわけ、ないか。
勝手な想像で嬉しくなっても馬鹿を見るだけだということは、昔あれほど思い知らされたから。
休憩のために寄ったカフェは、イチャつくカップルで混雑していた。
ああ、面倒臭いな……なんて澄ました顔をしているあたしだけど、きっと傍から見ればあたしもその中の一人なんだろうな……。
「お待たせしました、アイスコーヒー二つになります」
「はーいっ」
注文した飲み物を女性の店員さんがテーブルに置き、そう笑顔で言った。
それに笑顔で返した望月相馬に、店員さんは頬を赤らめながら「ごゆっくり」と去って行った。
……はあ。
なんてため息が漏れそうだ。
「……おっ、泣き止んだみたいだね」
「まあ、このラブラブムードだったらね……」
感動も冷める冷める。
あたしは濡れた目元をハンカチで拭うと、周りを一瞥した。
「……確かに。なんでこんなカップル多いんだろう」
望月相馬も周りを見渡しながらストローに口を付ける。
「多分、あの映画観たからだよ」
「あの映画?」
不思議そうに聞き返す望月相馬に、「うん」と頷いた。



