「うん………」


「けど、違ったみたい。ずっと好きだったんだろうね、純香ちゃんのこと。」


「…………。」


 望月相馬はふっと笑う。




「……あの時、純香ちゃんを見た時気付いた」


 あの時っていうのは、きっと再会した時のことだろう。




「もし純香ちゃんじゃなかったら、きっと助けなかったと思う。」


「……ダメだよ、助けないと」


「うん、だよね」

 望月相馬はくすっと笑った。

 あたしも望月相馬の腕の中で微笑む。



「俺さ、気付いたらドア開けてたんだよ。純香ちゃんを助けたくて、体が勝手に動いてた。」


「そうだったんだ……」


「うん」


「……じゃあ、どうしてあの時覚えていないフリをしたの?結構傷ついたんだけど」



 再会した時、望月相馬はあたしのことを覚えていないかのように振る舞った。

 いや、今この瞬間までずっと、あたしのことを覚えてるなんて言ったことがなかった。


 どうしてあの時、「覚えてる」って言ってくれなかったんだろう?

 そのたった一言があるだけで、あたしの復讐は始まっていなかったかもしれないのに。




「ごめん……目の前に純香ちゃんがいるって思ったら、どうも上手く出来なくてさ。つい、嘘吐いちゃった」