「あー………」


 望月相馬の声が段々低くなる。

 あたしは苦笑い。




「……ヤバいって思った時にはもう、純香ちゃん俺を睨みつけてた」


「ああ……ごめん、そんなこととは知らなくて」


「いや、いいよ。純香ちゃんが勘違いするのは当たり前だし。俺が、もっと上手く恋することが出来てたら良かったんだけど……」


「……そんなの」


 望月相馬は悲しそうに微笑む。

 あたしの胸が、ズキッて痛んだ。


 もし、あの時本当のことに気付いていたら。

 あの時望月相馬を恨むことは無かったと思う。

 そして、望月相馬に復讐することも無かっただろう。




 あの時、自分の気持ちを上手く伝えられなかった望月相馬。

 あの時、何も気付けずただ望月相馬を恨み続けたあたし。

 二人の気持ちがすれ違って、複雑になってしまった恋。


 二人の初恋は、歪んだ形で終わるところだった。

 けれどあの日、偶然か必然か、また出会ってしまったんだ。




「あの後、やっぱり純香ちゃんは誤解しちゃってて話しかけても無視だったし、純香ちゃん、急に転校しちゃうし……」


「あー………」


 なんて言ったらいいのか分からなくて、結局どっちつかずな笑みで終わる。




「そのまま、俺の初恋は終わった。その後、俺も何人か好きな人が出来たし、恋人も出来たけど、心のどっかにいつも純香ちゃんがいた。最初は、初恋ってずっと心に残るって言うから、そんなもんだろうって思ってた」