大嫌いなアイツの彼女になりました。






 相馬は大分怒っているみたいだ。



「だーから、ふざけてねえって。けど、お前に見て欲しいんだよ。俺の告白ってヤツ?」

 そう言うと、相馬はくすっと笑う。



「見たいわけないだろ?お前と純香ちゃんが一緒にいるって思うだけで吐き気がする。」


「ふっ……じゃあ、考えを変えてみればいいだろ?」


「どういう意味だよ」


 相馬は本当に単純思考だ。

 一途で、馬鹿で、取りあえず突き進めって性格で。

 計算するってこと、出来ねえのかよって思うよ。



「そのままの意味だよ。純香ちゃんの気持ちを聞ける……としたらどうする?」


「純香ちゃんの気持ちを……?」


「そう……お前にまだ気持ちが残っているなら、断るだろうしさ」

 俺がそう言うと、相馬はふっと鼻で笑ってみせた。



「何言ってんの?気持ちなんて、初めから無かったんだよ」



 ああ、もう一つ付け忘れてた。


 相馬は、他人の言葉を素直に信じすぎるんだよな。

 純香ちゃんなんて強がりの塊じゃないか。

 いちいち言われる言葉を真に受けてたら、持たねえぜ?




「……それについても詳しく聞けるかもしれねえぜ?なあ、知りたくないか?お前の本気のやり直しが、純香ちゃんの心をどう動かしたのか……さ」


 俺はそう言うと、部屋の外から聞こえて来た足音の方を見る。


 ……ヤバいな、純香ちゃんが帰ってくるよ。

 相馬を説得している時間はなさそうだ。


 電話を切る前に俺は、


「……ま、来るかどうかはお前の自由だ。ただ、俺が純香ちゃんに何をするかは分かんないよ?……今居る所は、駅前のカラオケ店。純香ちゃんが働いている所だよ。部屋は、102号室」


 と、言った。