大嫌いなアイツの彼女になりました。








 そして、いつものように優しく微笑むと泣きかけているあたしの頭を撫でると、

「………ごめんね」

 と言った。



 まだ混乱しているあたしが首を横に振ると、

「ありがとう」

 中川くんは、また優しく微笑んだ。




 そして中川くんは徐に立ち上がると、ドアの方へ向かって歩き出す。


 ドアを開けた中川くんは、

「おい、覗き魔。呼ばれてんぞー」

 と言った。




「えっ……?」

 もしかして、誰かいるの?


 あたしはソファから立ち上がると、ドアの向こうを覗き見る。

 でも、中川くんが邪魔で何も見えない。



「……じゃあな。俺、帰るから」

 中川くんはドアの向こうにいるであろう〝誰か〟にそう言った後、カラオケルームを出る。






「えっ………」

 あたしは小さく声を漏らす。



 中川くんは帰る気なのか受付の方へ行ってしまって、もう姿が見えない。


 でも、そんなこと気にならないくらい、あたしは驚いていた。

 中川くんがカラオケルームを出たことであたしにも見えた、ドアの向こうにいた〝誰か〟。



 それは、あたしがさっきつい呼んでしまった、〝望月相馬〟だった。