「………え?」


 驚いたように、その場にいる全員がこちらを向いた。

 相馬くんも目を見開いている。


 あたしはそんな相馬くんをじっと睨みつけ、

「………最低」

 と言うと、走ってその場を去った。



「ちょ、純香ちゃん!」

 そんな、今更悲しそうな声で呼び止められたって、もうあたしは騙されない。





「うっ……うぅ……」


 あたしは走りながら涙をポロポロ零した。



「わっ!」

 家に帰る途中にある階段に躓いて、大きく転ぶ。




「…………。」

 膝と手が擦りむけて、痛々しい真っ赤な傷が出来る。



 それでもグッと地面を手で押して立ち上がると、また走り出した。




 とにかく、全部忘れて走りたかった。


 そうしたら、この悲しい気持ちも、まだ残っている相馬くんへの期待感も好意も、この想いも、全部一緒に消えてくれると思ったんだ。