トイレかな?

 なんて思っている時に、視界に直樹の姿が入ってきた。


 ……直樹なら、隣の席だしなんか知ってるかも。




 俺は教室の中に入り、直樹の元へ向かった。


 直樹は携帯をいじっている。

 でも俺に気付くと、「おう」と言って軽く左手を上げた。



「なあ、直樹。純香ちゃん知らねえ?」

 と尋ねた俺を一切見ず、直樹は携帯をいじりながら答える。


「ああ……純香ちゃんなら山口達に連れて行かれたよ」


「山口……?誰だ、それ」


 山口なんて名前どこにでもあるから、よく分からない。



「えっとね、お前のファン。……結構怒ってたなぁ。今頃、純香ちゃん何かされてるんじゃね?」


 直樹は普通の会話をしているようにそう言った。




「はっ?それってヤバいやつ?」


「まあ、そうだと思うよ。山口、どっかの暴走族と繋がってるみたいだし。」


「暴走族?」


 直樹はそう言っている間も携帯をいじっている。

 携帯から聞こえる音からして、ゲームでもしているんだろう。


 そんな直樹とは対照的に、俺の心は落ち着きを失くしていく。



 ……暴走族と繋がっている山口って奴に、純香ちゃんが連れて行かれた?

 嫌な予感がして、鳥肌が立つ。