香田さんが仕事に戻ってしまったあとも私たちはしばらく撮影を続け――もうそれは卒業の記録を残すものじゃなく、ただただ楽しいものや、好きな景色、果てにはお互いの手相なんかも撮り始める始末。
「――もうそろそろ終わろっか、桜ちゃん」
「だね。もっとデータの整理してくればよかったなぁ。楽しかった」
「うん、私も楽しかったよ。今度写真の交換とかしようね。高校の入学祝いも一緒にしようっ」
「ウンッ、約束ね! ――ね、菜々ちゃん」
「ん?」
夏の頃から髪を伸ばし始めた桜ちゃんは、
「菜々ちゃん、ここはもういいから。――行きたいとこ、あるでしょ?」
もう長距離選手みたいなんかじゃなくなってた。
「っ!?」
大きな瞳は、私の心を透かし見ようと必死で。
「……、――」
――うん。そうだね。
私は、頷いた。