コトノハの園で



館内一番奥のスペース、利用者も多くない原書の並ぶ方へ進んでいくと、


「いたっ! 菜々ちゃんっ!」


桜ちゃんが小さな声を上げた。


原書たちに埋もれながら、菜々ちゃんと呼ばれた人は、驚きの表情をこちらに向ける。


身長は桜ちゃんよりも遥かに小さいけれど、少し年上だろう――認識し、思わず一歩、足が停止する。


けれど、すぐに歩は進む。


「専門家、連れてきたんだ。森野さんに教えてもらおうよっ」


菜々ちゃんという人は、小柄に加えて華奢。真面目そうで、大人しそうな人だった。


消え入りそうな声で躊躇する。当然だろう。


「えっ、でも……」


「だいじょーぶだって」


「……」


怪しむように、菜々ちゃんという人が僕を見上げる。


思わず目を逸らしてしまった。