これからデートのふたりを残して、僕だけ一足先に店を出た。


むせ返る外気さえも今は心地よくて、大きく呼吸をし、ついでに伸びもする。


「っ?」


チクリ、と襟元に違和感を感じた。


午前中、健人に切ってもらった髪の名残だと気付き……デートなら、言ってくれたなら、今日は遠慮したのに、ととても申し訳なく思う。


……あのふたりは、いつもそうやって、僕に時間を割いてくれる。


そして、それを面倒なことではなく、当然だと思っている。


そうしようとしてなっているのではなく、ごく自然なこととして。


――いつからだろう?


なんて、とぼける気はない。







カフェという場所は、隣の席との間隔が狭くて苦手だ。会話や何気ない動作、自分の全てが、見知らぬ人に筒抜けのようで落ち着かない。


……現実……隣の赤の他人は、僕のことなど気にもしていないのだけれど。


でも仕方がない。


今日のカフェは特に、だ。


僕と健人以外……女性だったから、特に。