十二月の空は低く、色の境界線が明確ではない。けれど、このベンチ、中庭からの外界から切り取られた空は、いつも何処よりも、美しく見える気がする。
春の霞、
夏の鮮やかさ、
秋のいわし雲、
これから訪れるであろう雪空も、
全て。
それはそれはもう、絵画のような風景なのだ。
「最近、菜々ちゃんに会えないなぁ……」
「そうなんですか?」
「そうだよっ。図書館に来ないじゃん。森野さん冷たいっ」
そんなふうに言われてしまうのは……やはり、僕が普通ではないから……なのだろうか。
「ドーナツ屋さんのとき、桜には気をつけろって言ったのに、菜々ちゃんの方が風邪ひどくなっちゃったのかなぁ……肺炎とか重かったらどーしよう……ウワッ、今気づいたっ。桜、菜々ちゃんのケータイ知らないよ~」
「えっ……深町さん、そんなに患っているのですか?」
「だから知らないって言ってんじゃんっ! ――森野さん、もしかして心配した?」
「それは、まあ、人並みには」
心配を出来た僕は、
「ゴメンゴメン。桜が言いすぎたねっ。大丈夫だと思うよ。この前も、少し鼻声? なくらいだったし」
安心を出来た僕は、普通だろうか?



