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初めて、森野さんから話しかけてもらえた。
私にとって、森野さんの頑張りにも――うん。きっといいこと。
「ささっ、最近、近頃……深町さんは、よくここに来ます。それは、何故……」
私からの会話は、ほとんど本に関することだけ。回数だって多くない。特に怪しまれるようなことはしていないと思うけど……。
こういう人は危険回避能力に長けているから、何かを感じさせてしまったんだろうか。
でも、もしかしてあるかも、と予測していた質問。
そうだよね。頻繁じゃないけど、きっと、よく顔を見るようになったとは思うかもしれない。
読んでいた本を閉じる。
「それはですね――」
心残りのないよう過ごしたいっていうのは本当で、残りは安心してもらえるように答えた。
全てを言わなかっただけでそこに嘘はないと、心で弁解しながら。
ごめんなさい。でも、今はまだ……。



