そして、何より僕にとって助かるのは、この距離だ。
多少、顔見知りになった。
けれど、途端に距離は縮まらず。
それは、どんなに安心出来ることだろうか。
中庭のふたつのベンチ。
僕と深町さんは、それぞれひとつを占領し、座る。
決して、そこから動くことはない。
これ以上離れていたら会話にはやや難しく、辛うじてそれが可能な、そんな距離。
これ以上近くだったら、僕はきっと、“新人類”との接触に挫折していただろう。
……ああ……。世の中の女性が皆こんなふうだったら、僕は大丈夫だったかもしれない。
過去を思い出し、うらぶれてしまった……。



