そうして僕は納得する。
そうか。それなら頷ける。勉学に関係のない興味なら、時間を自由に使える今が最適だろう。職に就いてしまえば、学生の頃のようにはいかないのだし。
心の中で謝罪する。変な勘繰りをしてしまったことを。
深町さんは、とても良いお嬢さんだと思う。
真面目でしっかりしていて優しい人だ。
慣れない原書を丹念に読み込み、難解な箇所があっても、時間をかけ自分で解決しようとする。本当に無理だと判断した時のみ質問をされる。その見極めどころもいい具合だ。
勘の良さは、きっと日々の行動にも如実に出ているのだろうと勝手に推測する。
さりげない気配りも出来る人だ。
たとえば――
同世代の、多くの、ほとんどの女性がそうするように、別にそれが悪いことではないし、仕方のないことかもしれないけれど、必要以上だと館側も困るということなのだけれど……深町さんは決してそれをしない。いつも適度にヒールの高さがついた靴を履いているらしいのだけれど、彼女は決して音を響かせ歩かない。
香田さんと話している時に出てきた話題だった。
無意識でも意識的でも、その場を考えられるこの行動は、他にも応用可能な長所なのだろう。意識しなければ難しいことだと、女性側の意見として、香田さんは述べていた。
多々ある感心した出来事のひとつだった。



