コトノハの園で



決して、視線を合わせてくれることなく、森野さんは答えてくれる。


「っ、いえ……その……深町さん、よくここにいらっしゃるので。だから、今日もかと……」


まるで、私が詰問してるみたいな弱々しい声。


――ああ。けど、知っていてくれた。


私がこの中庭に来るのは、気に入ったからもあるけど、森野さんと同じ景色を見たかったから。


でも、そうしてきた多くの時間より、今、この一瞬の方が幸せでたまらない。


もう、今日は充分。


足りないことはたくさんだけど――これで充分だ。


「いいんです。用はもう済みましたから」


森野さんが静かに首を傾げる。


「お礼です――森野さんに」


「そっ、そんなことのためにっ!? ……申し訳ありません」


「大事なことですよ。だから、そんなに恐縮しないで下さい。それでは――」


――サヨウナラ。