コトノハの園で



あの時のことを思い出し、私の内側が熱くなる。


嬉しかった。


けど、同時に恥ずかしい。なんで私、あの時……『存じております』なんて開口一番おかしな言葉……。


そして、気にもされていないことに勝手に落ち込む。





「ありがとうございました」


「……えっ?」


「桜ちゃんから、お勧めリストいただきました」


「いっ、いえ、そんな……」


「あと――これは少し前のことですけど、閉館時刻に気づかなくてすみませんでした。教えていただいて助かりました」


「っ、そんなことっ、あったんですねっ。仕事ですから気になさらずにっ」


そっか。覚えてるわけは、当然ないよね……うん。


日和ってしまった気持ちのせいで、私からの会話しかない空間に沈黙が流れる。


いけない。切り替え切り替え。


「じゃあ、私はこれで失礼します」


「……えっ……用があって来たのでは? 僕は、もう行きますから、こっ、ここはどうぞご自由にっ」


こんな言葉、


「――なんで、そう思ったんですか?」


もらえるとは、思ってなかった。