欲を言えば、もっと怒ってもいいくらいだったのだけれど、その時の深町さんを想像して、僕の前では相当頑張ってくれていたのだという愛しさの感情のほうが勝ってしまった。
「森野君。そのあとね、アタシも行ったの。普通のお客としてだから怒んないでね。男と女に態度変える子だったらいけないと思って」
……もう怒る気力は失せた。それに、伊達さんだってそんなこと疑ってもいなかったと思うのだけれど。
「やっておいて正解。態度全然違うの~」
「ええっ!? そんなことっ」
僕の反応に伊達さんはにやりとする。健人の不敵な笑みとそっくりだ。
「すっごーく優しくて、丁寧な接客で可愛かった。健ちゃんの時みたいな萎縮は一切なくてね。――好きな人にプレゼントしたいんですけどって相談したら、ずっと真剣に考えてくれて。アタシに付っきりだったから、あとで怒られたりしなかったかしらって心配になっちゃった。――で、訊いたの。貴女ならどれを選ぶかって」
その回答が、気にならないわけじゃない。けれど、僕は……。
「そしたらね、すぐにひとつの箱を持ってきてくれたよ。『私の一番です。バレンタインの時期は紅いリボンのラッピングで、それもとても素敵なので、宜しければまたいらして下さい』って。顔真っ赤だった。そのチョコがこれっ。森野君にお土産」
中身を確かめなくても分かる。伊達さんがくれたお土産を開けたら、きっと小さなトリュフが幾つも入っている。
これは金色のリボン。けれど、バレンタインには紅いリボンに変わる――あの時、僕に投げて渡されたものと同じだ。
サンプルなんかじゃない。そんなものに、あんな豪華なリボンは施されない。
そんなこと……。



