「バッカじゃないのっ! 森野君っ。過去の最悪な女に重ねて菜々ちゃんを扱ってたのっ?」
「そんなことっ」
「同じよっ!! そんな理由でっ、せっかく、好きになれて、好きになってくれた人遠ざけるなんてっ。そこはまともな判断してよっ! 菜々ちゃんの策略にはまったかもしれないけど凄いことじゃないっ」
「へー。策略ってアリなんだ。それでも凄いのか? 千花」
茶化すためだけに健人が口を挟んできた。
「策略するわよっ! 誰かを想ってなら、女はみんなそうするのっ! 善と悪があるのは悲しいこことだけどっ」
「へー。じゃ、あの子は?」
健人は、善か悪かを僕に問うてきた。そんなこと、僕を含め明白なことなのに。
「――だからね、凄いことなんだよ? 森野君を、この森野くんをそんな気持ちにさせたんだよ。アタシにだって、まだおかしいとこあるのに」
「ふっ、深町さんにだって同じようにしかっ。いやっ、もっとおかしいって」
「それでもよっ!!」
「っ!! ――……」
――充分、です――
拷問でも受けているような状況下、深町さんの言葉を思い出す。
台詞こそ違えど、ふたつはよく似ていた。
僕は伊達さんに壁際で締め上げられ、
伊達さんはもの凄く怒っていて、
健人はキッチンで黙々と動いたまま、
言葉はなく、しばらくの時間が経過した。



