しばらく黙ったままだった伊達さんが口を開いた。
「……アタシは、大丈夫だから」
顔色も、もう元に戻っていて。
「だから森野君。健ちゃんからの質問の答えを早くしてあげて?」
差し当たり体調に問題はなく、それを伝えた。けれどいったい……。
「おおそうか。――千花。そういえば蟹もあったよな。入れるの忘れてただろ。解凍したんだし今から食おうぜ」
蟹と僕の体調との関連が不明なまま、健人が席を立ち、冷蔵庫へと向かう。
「ありがと、健ちゃん」
「準備してきてやるから、その間だけ解禁な」
さっきから、ふたりの会話は霞のようにつかみどころのないことが多い。
「どこまで?」
「首根っこくらいなら平気だろ」
言葉通り、健人はキッチンに消えてしまった。冷蔵庫の扉が開けられると、空気の通りがいい部屋にも蟹の匂いが充満してきた。
「お土産、ケーキだけじゃ申し訳ないな」
伊達さんのお父さんの北海道土産らしいのだけれど、僕が加わることで存分に食べられないことにはならないだろうか。問うと、伊達さん基準でも大量だと返される。
「ありがとう。ご馳走になります」
頷き、伊達さんはひとつ深く呼吸をした。
「うん。でも、蟹を待つ間に少し――」
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