「えっ……森野君、もしかして体調悪い?」
ついには僕の不調が原因だと丸め込まれそうになる。伊達さんの顔は、鍋は適量で、もう原因はそれしかないと語っていて。
「伊達さん……、そうじゃないよ。ああ、ただ、昔よりも食べる量は減ったかな。それだけのこと」
「やだ。オッサンになるの早すぎっ。ダメだよ、健ちゃん。森野君をちゃんと見ててあげないと」
「千花の阿呆。ただの色ボケ、恋煩いに付き合ってられっかよ」
健人がわざとらしい溜め息をつき、こちらにまで火の粉が飛んでくる。ふたりのこういったやりとりに巻き込まれるのはしょっちゅうだけれど、今はなんとなく嫌だ……。
「――透」
「っ、……はいはい」
「オマエも相当阿呆だ」
「……」
……健人の言うことなど、いちいち全部もっともで……。
「……けど、食欲とそれとは関係ない」
精一杯の、僕の反論だった。



