「そんな……」
諦めたように笑う姿に泣きたくなった。
けれど、私を気遣って接してくれている人達の前で泣くなんてきっと失礼だと思ってグッと耐える。
どうかシン様やルニコ様がアガタ様とジーア国の国王様の考えに気づきますように。願いをこめて首にかけられている指輪を強く握った。
***
翌日、朝早くに目覚めた私を見つけた――恐らく監視役の人――に手を強く引かれ、連れて行かれたのは草が辺り一面伸びきった場所だった。
「お前はこの辺の草でも刈ってろ」
吐き捨てるように言い、男の人は使い古された鎌を私の近くに投げ捨てる。
「せいぜい蛇にかまれないように気ぃつけるんだな――」
ゲラゲラと品のない笑いを響かせて持ち場に戻っていく姿をじっと見る。
私は気合いを入れようとメイド服のスカートの中にはいた作業ズボン――以前労働場にいた人が置いていったものをいただいた――をギュッと引っ張り上げる。
絶対に負けるもんか!
そう胸に抱いて鎌をギュッと握りしめた。
「――ふう……」
刈っても刈っても辺り一面草だらけ。
自分が動き回って刈った場所だけが茶色を現している。
太陽はほぼ真上でお昼だと判断した私は作業を中断する。
作業手袋を外して地面に座り、支給されたパンをかじる。
ご飯の支給は一日二回。朝にパンが二個と夕方にパン一個とスープ。
夕方は全員で食べるけど朝のパンを食べるタイミングは各自らしい。
朝と昼に分けて食べるのも自由だけど、長く休んでいると見張りがとんでくるから気をつけなと聞いた。
水は朝のパンと渡される水筒一つ分だから夏場は特に大変だと昨夜言っていたのを思い出す。
食べ物が支給されるだけマシだとみんなは言っていたけれど、この量じゃ絶対足りないはずなのに。
私はもどかしさを残ったパンと一緒に口の中に放りこんだ。
――ご飯を食べ終えて作業を再開。
監視の人は蛇に気をつけなと笑っていたけど、私は正直蛇よりも虫のほうが怖い。
毒蛇は危険だけれど私にとっては虫も同じくらい怖い存在だ。
だから草を刈りながら虫がいないか蛇がいないか忙しなく見ながら鎌を持つ手を進めている。
――そんな時だった。
私が作業している少し前の草の間から、明らかに何かが顔を出して動いている。
細長い体を動かしている――どう見ても蛇にしか見えない。