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人目をかいくぐりながら何とか王宮の入り口にたどり着く。
入り口近くにある大きな置物に隠れながら、私は時々近くを通る人の会話に耳をすませた。
しばらくそうしていると蓄力石を手に持ちながら歩く二人組を見つける。
そのうちの一人はルニコ様と謁見の間で会う時に近くにいた男の人で耳をすませる。
「しかし、シン様は仕事熱心だな」
「ああ。今もまだ執務室にいるんだろう?」
「アガタ様が部屋でご機嫌を損ねているそうだな」
ははは、と廊下に笑い声を響かせながら去って行く二人に私は心の中で情報をくれたことに感謝した。
とりあえず執務室ということが分かれば、一部屋ずつだけど会える可能性がある。
私は人気のなくなった廊下を再び歩き始めた。
一部屋一部屋わずかに扉を開けながら明かりがついているかを確認しながらまわり、幸か不幸か今までどの部屋も真っ暗だった。
私が元の時代で知っていて残った執務室は後一つ――シン様の執務室。
祈るようにそっと扉を開ければもれる明るさに視線を部屋の奥へと向ける。
窓へと向いてこちらに背を向けて立っている姿に私は勢いよく扉を開けた。
「シン様……っ」
「! カル……?」
バッとこちらを振り向いたシン様に扉を閉めて駆け寄る。
眉を下げて戸惑った様子のシン様にためらわれるけれど、知らせるのは早いほうがいいと思って口を開く。
「シン様大変なんです……!」
「どうしたの? こんな遅い時間に」
「アガタ様が――」
私は食堂で言われたことをつっかえながらも必死に伝えた。
「彼女がそんなことを……?」
「はい。このままでは大変なことになってしまいます……っ。――シン様……?」
慌てる私とは反対にシン様は冷静すぎるほどに静かで、思わず首を傾げてしまう。
国に関わるかもしれないのになんでそんなに冷静でいられるんだろうか……。
「落ち着いて? 本当にアガタさんが言っていたの?」
「はい……。どうしたらいいのか分からなくて、話せるのはシン様しかいないと思って私――っ」
言葉の途中で手首を引かれ、腕の中に閉じこめられる。
トクン、トクンと聞こえるシン様の胸の音に少しだけ気持ちが落ち着いてシン様の服をそっとつかんだ。

