うーん。人に聞くのもまずいしどうしよう……。
悩んでも答えは出ず、とりあえず部屋から出ようと立ち上がって進み扉の取っ手に手をかけた。
「え……?」
いつもならすんなり開く扉がわずかな隙間を作るだけで開かない。
動かしてもガチャガチャと鳴るだけでまるでアガタ様がくる前と同じ状況だった。
もしかしたらアガタ様が、私が抜け出してシン様に伝えに行かないようにしたのかもしれない。
アガタ様がシン様の所へ向かうのはよく見かけるけど、反対にアガタ様の部屋にシン様が訪ねてきたのは見たことがない。
私が知らないだけかもしれないけれど、アガタ様が嘆いていたのを聞いているからまったくの間違いではないと思う。
だから、私がアガタ様の隣の部屋にいるのもシン様にはきっと知られていない。
しかし、このままでは部屋から一歩も出られない。目をこらせば鎖が外側の取っ手に巻きついているのが見えた。
私は気が進まないながら狭い隙間から無理やり片手を出して鎖に触れる。そしてお母さんの言葉を思い出した。
――以前、能力を使って料理を作る所をお母さんに見てもらっていた時のこと。
必要なものはそろっていて後は能力を使って料理を作るだけ。グッと両手に力をこめると手のひらから光が現れ始めて集中した。――それなのに、なぜか小麦粉が粒になるなどしてお母さんから声がとんできて。
合わせるどころか原料になってしまったようで、「あんた、作るより壊すほうが向いてるんじゃないのかい」とため息をつかれた。
お母さんが言うには製造能力は発想の転換で分解したり原料にしたりも可能だけど、それを使いこなせる人は少ないらしい――。
作るんじゃなくて壊すように力をこめたらこの鎖ははずれるかもしれない。
私は鎖の一部をつかみ、ギュッと力をこめた。
「熱……っ」
手が光ると同時に焼けるような高熱に手を離してしまう。
すると鎖は一部が溶けたようになってつながった部品がはずれ、重みに従うようにズルズルと徐々に動いてやがて床に落ちきった。
手のひらが火傷のように痛むけど、ポケットに入れていたハンカチを巻きつけてついに部屋を抜け出した。

