「必ず二人で帰ろう」と耳元で囁かれた言葉に私はボロボロと泣きながら、頷いて広い背中にしがみついた。
――それからしばらく涙が止まらなかった私を見かねてか、ルニコ様が毎日少しだけ二人で会う時間を作ることを許可してくれた。
そのかわり、場所は私がいる部屋で部屋の外には見張りつき。
おかしな言動があったらすぐに中止するという条件がついたものだったけど、シン様に毎日会える、それだけで私の心は救われるようだった。
それから数日の間、夜のわずかな時間でもシン様に会えて話せることに私は少しだけ気持ちが前向きになっている。
今夜もシン様が部屋に訪ねてきて二人でソファーに座り、どんな話をしてくれるのだろうかと待っていてもシン様はどこか上の空だった。
「シン様……?」
横を向いて顔を見ながら呼びかけても、シン様は言葉を発することなく何かを考えているようで。
何かよくないことでもあったのかと不安になる。
そっと服の袖を引くとハッとしたように私のほうを向いた。
「――ああ、ごめんね。ボンヤリしてしまって……」
「どこか具合でも……?」
「ううん。大丈夫だよ」
「心配してくれてありがとう」と笑うシン様だけどどこか元気がないようで。
胸に生まれた不安を抱えたまま次の日を迎えることになる。
朝食を運んできたメイドさんの言葉に私は強い衝撃を受けた。
湯気がたつ料理を見ても体は熱を失う一方で、ついに朝食に一口も手をつけることなく下げてもらうことになる。
気遣わしげなメイドさんの様子がさらに現実を突きつけているようで信じたくなかった。
――シン様に婚約者ができた――。

