扉を開けるとできるわずかな隙間。
 その隙間からは取っ手に鎖のようなものが巻きつけられているのを見て力なく閉めた。
 ――部屋に入れられてから数日、私は軟禁状態のような生活を送っている。
 部屋の中にはお風呂場や用を足す場所があって、ご飯だけは一日三回届けられる。
 持ってくるのはメイドさんで、メイドさんの後ろには怖そうな顔つきの男の人。
 男の人は部屋には入ってこないけど、メイドさんが退出する時に扉の前にいるからその間は部屋の前で待っているのだと思う。
 部屋に入れられた日を含めて四日目までは窓から見える太陽の動きや空の明るさで日にちを数えていたけれど、それ以降は止めてしまった。
 緊張でご飯はあまり喉を通らないし夜は眠りが浅い。日中もベッドかソファーでボーッとするばかりになってしまって。
 空が明るくなる度に、祈るように扉の取っ手をつかんでは落胆を繰り返していた。
 二日目に朝食を持ってきたメイドさんによると、まわりにある国々が発展している中でセルペンテ国は近隣の他国よりも発展具合が著しく治安もいい。そのため、セルペンテ国を狙う者達が度々現れ始めていて現在は治安が乱れているそうだ。
 白銀の髪に赤い目の容姿を持つ人は国王または次期国王以外の例外はなく、シン様の身元は確証されている。
 逆に私の身元を確証するものは何もなく、例え時代の違う第一王子以外の王族や国王の妻だとしても自由にはできないそうだと告げられた。
 頭では分かってもなかなか気持ちが追いつかなくて、部屋に入れられてから一度もシン様に会えないことが不安に拍車をかけている。
 テーブルには少し前に置かれていったパンと野菜のスープがトレーにのってある。
 扉の前からノロノロと歩いてソファーに座り、スープの中へスプーンを入れた。
 スープと細かくきざまれた野菜をすくって一口。
 こちらの季節は秋を迎えていて、スープの温かみが喉を通ってじんわりと広がった。
 歯ごたえのあるパンはちぎってスープに浸しながら食べて。どちらも半分ほどを食べたところでテーブルの端に寄せる。
 けして美味しくない訳ではないし、ご飯と共に寝床を与えてくれていることも感謝している。
 それでも笑顔でご飯を持ってきてくれるメイさんや、お皿に豪快に料理を盛りつけてテーブルに並べるお母さんの姿が浮かんでしまって視界が潤む。