「カル……!」

 横を見ればフラフラとした足どりで向かってくるシン様の姿に、私は慌てて立ち上がって駆け寄る。

「シン様! 大丈夫ですか……!」

「僕はもう大丈夫。ごめんね。怖い思いをさせて――」

「いえ。シン様がご無事ならそれでよかったです……っ」

 無事を確かめたくて私はギュッと抱きついた。
 低い体温に確かに刻む鼓動の音に体の力が抜ける。
 シン様の存在を確かめて安心していると咳払いが聞こえて音のほうに顔を向けた。

「安心しているところに水をさすが、二人は別々の部屋に滞在してもらうことにする」

「僕の父とは言え過去のあなたは他人と同意。彼女の身の安全に関して信用できません」

「こちらも同じだ。お前は容姿から王族の血筋と認めるが娘は他人。ここへきた経緯は理解してもそれ以上にはならん」

 「別々の部屋に連れて行け」と言ったきり、ルニコ様は背を向けてそれ以上の言葉を受けつけない。
 私とシン様はお互いの名前を呼びながらも別々の部屋へと向かうべく、ルニコ様の部下に引き離されてしまったのだった。


***


 「ここで大人しくしていろ」と投げ出されるように入れられた部屋は、もとの時代の住まわせてもらっている部屋と変わらないと思える大きさ。
 だけど内装や家具類の位置などが違い、嫌でもここは違う場所だと言われている気がして気分は落ちこむ一方。
 ここまで連れてきた男性が部屋の外から鍵をかけたため部屋を出ることも叶わない。
 頭に浮かぶシン様の優しい笑顔がひどく恋しくなった。