「ルニコ様にお願いがあります。どうか話をお聞き下さい……!」
***
それはもう賭けだった。
頭を下げた瞬間か生意気に願い出た瞬間か、即座に殺されてしまう可能性は十分にあった。
けれど急に具合が悪くなったシン様を連れて逃げるだけの力は私にはないから。
一縷の望みでおこした行動はどうやら功を奏し、話を聞いてもらえることになった。
私とシン様は後ろ手に縄で縛られ、がっしりとした男の人の監視のもと謁見の間に連れて行かれる。
シン様の具合が心配でせめて異能封じの石の力を弱めてほしいとお願いしたけれど、シン様の力の強さを察しているようで即座に拒否されてしまった。
王座に座ったルニコ様が煩わしげに髪をかきあげ、床に膝をついて座る私達を見る。
「さあ話してみるがいい」
「――はい。私達はルニコ様――恐らく未来の時代でのルニコ様に、宝物部屋にある王様に伝わる首飾りに触れるようにと言われ、言われた通りにしようとしました。ですが、あと少しで触れると思った瞬間に首飾りが光り出して目を閉じてしまったんです。シン様に呼ばれて目を開ければ、そこはもうこちらの王宮の宝物部屋でした」
話し終わるとルニコ様は目を閉じる。
少しして目を開けたルニコ様は目に冷たさを宿しているような様子で勢いよく立ち上がった。
「そんな戯れ言を一国の王が信じると思うのか? ――この場で男共々処刑してくれる……!」
そんな……っ!
私が言葉を失っている間にルニコ様はユラリと腰に携えた剣を鞘から抜き、一瞬で私の前に現れる。
恐怖に目を固くつぶれば目尻から涙がこぼれて。
せめてシン様が助かりますようにと祈った。
少し離れた場所からシン様の弱々しい声が聞こえ、ますます蛇神様へと祈りをこめる。
「……っ!」
肩を強くつかまれる感覚に目を閉じたまま体を強ばらせると、目元をベロリと何か濡れたもので触られた。
「――どうやら嘘ではないようだな」
え……?
間近で聞こえる声にそっと目を開ける。
すると目の前にルニコ様がいて思わず体が後ずさってしまった。
そんな私の行動を気にしていないようでルニコ様は口の片端を上げて笑みを作る。
「私に涙から読めるものは偽れん。お前の話を信じよう」
え……?
剣を鞘に戻す様子をぽかんと見ていると、後ろ手に縛られた縄が解かれて自由になる。