蓄力石の光に照らされている赤く大きな宝石。
 台座に置かれた首飾りはついている宝石を中心として、生きているかのように様々な色彩を放って存在感を示している。
 ガラスケースごしでも惹かれる魅力は変わらなくて、思わずほぅっと息を吐いてしまった。
 そんな私の様子に隣にいたシン様はクスクスと笑う。

「そんなに気に入ったの?」

「はい! ここまで大きくて綺麗なルビーを見たのは初めてです」

 手にしたいわけではないけれど、景色とか宝石とか、綺麗なものを見るのは以前から好きで見ているだけで楽しくなる。
 ――午前中、執務室にお邪魔してシン様の仕事の様子を見ていたら急にルーチェ様がやってきた。
 なんでもルニコ様がシン様と私に宝物部屋へ行って部屋の中心にある首飾りを触るようにと言われたらしく。早く早くとルーチェ様に急かされる形で現在宝物部屋へときている。

「王様に代々伝わる首飾りなんですよね? 触ってもいいのでしょうか……」

 想像をこえたものに、ベタベタ触ったら汚れがついて価値が下がったりしそうだなと思って後ごみしてしまう。

「父が言うにはそうみたい。なんでも次期王になる者に試練を与えるとか……」

「次期王様にということはシン様に、ですか?」

「多分そうだと思うけど、今のところ何も起きていないからね……」

 「父が言うのだから触ってみよう」とシン様はガラスケースを外して横の台に置く。

「同時に触ってみようか」

「はい」

 二人で手を伸ばして宝石に手を近づける。
 あと少しでルビーに触れると思った瞬間、そのルビーがまばゆい光を放った。

「……っ」

「カル……!」

 眩しさに目を閉じてしまい、空をつかんだ手は大きくて冷たい手に包まれた――。


***


「――……ル。カル……!」

 呼びかける声に、意識が戻ってくる。
 閉じていたまぶたを開けばほっと息を吐くシン様が目の前にいた。

「大丈夫かい?」

「はい……。シン様は……?」

 まだ少しぼんやりしながら聞けば大丈夫と返ってきて一安心。
 首飾りに触ろうとしたら急に光り出してどうなったんだろう。そう思ってまわりを見ると、宝物部屋にいるはずなのにどこか違うような違和感に首を傾げる。
 シン様も何かを感じたのか部屋を見回し、顎に手をあてて考えるような仕草を見せた。