吐き出すように言われて私は言葉につまる。
 どう思ったと聞かれても急なことだったからただ驚いたとしか返しようがない。

「分かりません。ただ、指輪のチェーンが切れて嫌な予感がして……。シン様の姿を一目見たかった、ただそれだけなんです……っ」

 カッとなった気持ちが落ち着くと今度は急に寂しくなってくる。
 潤んだ目から涙が流れるのをそのままに私はシン様を見つめた。

「シン様は優しい方です。私にいつも優しくしてくれて、仕事だっていつも一生懸命で。確かにシン様は蛇神様の血を引いているお方です。でも人の血だって引いています。だから自分のことを化け物だなんて言わないで下さい……!」

 自分のことを化け物と呼ぶなんて悲しすぎる。
 私は衝動にまかせてシン様に抱きついた。

「カル……」

「シン様はシン様です! 例え蛇の姿になっても――」

「ごめん。そしてありがとう……」

 大声で泣く私が泣き止むまで、シン様はギュッと抱きしめていてくれた――。


***


 それからしばらくして泣き止んだ私。
 「もう一つ知っていてほしいことがあるんだ」と言ったシン様の様子をベッドの端に座らせてもらって見ていると、シン様は両手のひらを上に向ける形で胸元の高さまで移動させる。
 目を閉じたと思ったら手のひらが光り出して驚いた。

「わぁ……!」

 光がおさまるとシン様の手のひらには小さい白蛇が一匹乗っていた。
 あたりを見て舌をチロチロと出し入れしている。

「このように僕と父は白蛇を分身として出すことができるんだ」

「すごいですね!」

 可愛い大きさに思わず手を近づける。
 すると蛇はスルスルと私の腕に巻きついてきた。
 その様子にシン様が目を見開き、やがてパチパチと瞬きをする。

「カルは蛇は平気なの?」

「虫はほとんど苦手ですけど、動物なら大体平気です」

「珍しいね。国の始まりが蛇神様とは言え、毒がなくても蛇をあまり好まない人が多いのに……」

 蛇の体をなでながら考える。
 このような白蛇は街やお店の前でわりと見かけているから見慣れていたりするんだよね。

「小さい頃からお母さんが白い蛇は蛇神様と同じ姿だからそっとしておくようにと言っているんです。だから見かけても蛇神様が近くにいるのかな、と思っていました」

「ふふ、それはあながち間違いではないかもしれないね」