「こんな時間にどうしたんだい?」
「眠れなくて。それに指輪をつけていたチェーンが切れたらなんだかシン様に会いたくなったんだけど……」
入室禁止なんだってと言えば「ああ、今夜はそうか」とお父さんは何かを知っているようだった。
「お父さんは理由を知ってるの?」
「まあ、わりと長くお仕えしているからね……」
眉を下げるお父さんに私はうつむく。
国の歴史は習っていてある程度知っているけれど、シン様個人のことはほとんど知らないなと思うと悲しくなった。
「カル、シン様に会いたいかい?」
静かな声で聞くお父さんに私は顔を勢いよくあげる。
光に照らされている目が真剣なもので体に緊張が走ったけれど気持ちは変わらない。
「会えるの……?」
期待をこめてそう言えばお父さんが曖昧に笑うのでどう受けとったらいいのか迷う。
「カルがシン様を今よりも知りたいと思うなら。だけどね、会うことでシン様を傷つけてしまうかもしれない」
「それでも会いたい?」と続けられて戸惑う。
会って無事な姿を見たい。でもシン様を傷つけてしまうかもしれないとはどういうことなのか全く想像がつかなくて。
再びうつむいてしまった私の頭をお父さんが優しくポンポンと軽く触れてくる。
「カルならきっと大丈夫だと信じているよ」
お父さんは服のポケットから鍵を取り出してシン様の寝室の鍵穴に差しこんで回す。するとカチャリと鍵が動く音が耳に届いた。
それからその鍵を私にそっと手渡してくる。
「中に入ったら内側から鍵をかけるんだ。退室した時はその鍵で忘れずにしめるように。――さあ行っておいで?」
目尻を下げたお父さんが私の背中を優しく押す。
それに促されるように私はできるだけ音をたてないように扉を開けた。
***
部屋に入って内鍵をしめて一歩踏み出す。
それとほぼ同時に「誰だ!」と鋭い声がとんできて体がビクついた。
「今夜は入室禁止だと伝えたはず。早く出て行くんだ……!」
怒りを感じる声色に体が震える。それでも私は一歩、また一歩とベッドがある奥へと近づいていく。
シン様に嫌われるのではないか。シン様を傷つけてしまうのではないか。
そう思うと今にも涙が落ちそうだけど、どうしてもシン様の姿を確認したかった。

