「はい。綺麗な指輪で大切にさせてもらっています」
指輪に触れながらそう言うとクリスタさんは安心したようにホッと息を吐いたようだった。
「安心しました。気に入っていただけたかどうかずっと気がかりでしたので」
それからそれぞれの実家のお店の話で盛り上がり、部屋までの道のりはあっという間だった。
***
眠れない……。
メイさんと別れてベッドに横になるまではいつも通り。けれど時間が経ってたもなかなか寝つけなくて、ここまで眠れないのは久しぶりな気がした。
気分転換でもしようとベッドから起きて、窓際に行った私はカーテンをずらす。
夜空には満月がポッカリと浮かんで輝いている。いつもは見ていて落ち着く月明かりが今夜は何故か胸が騒ぐ。
不安になってまだ首にかけていた指輪をギュッと握ろうと触れた瞬間。
「――!」
ブツリとチェーンが切れて指輪が落ちていき、やがて固い音をたてて床を転がった。
何かの前触れだろうか……?
足元に落ちた指輪を拾いながら胸に広がる不安に鼓動が速くなる。
何だか急にシン様に会いたくなった。
仕事中に訪ねるのは気が引けるけど、どうしてもシン様の顔を見て無事を確認したくて。
指輪と切れたチェーンをなくさないようにテーブルに置いて部屋をそっと後にした。
たどり着いた執務室の扉をノックしても人の気配が感じられず、開けてみるとそこは真っ暗で誰もいなくて。
私が知っていてこの時間帯にいそうなのはこの他に寝室しか知らない。
とりあえず寝室へと向かうことにした。
「え……? 入室禁止、ですか……?」
シン様の寝室の扉を叩こうとすると近くを巡回していた人に今夜は入室禁止だと言われてしまう。
理由を聞いても詳しいことは分からないらしく、ただ今夜はシン様の部屋には入室禁止とだけ伝えられているみたいだった。
「すみません。私も入室禁止とだけ言づかっているもので……」
「いえ。こちらこそすみませんでした……」
無理を言っても仕方ないよね……。
とても気になるけど勝手に入るわけには行かない。
巡回を再開した姿を見送って私も部屋へと戻ろうとした時だった。
「――カルなのかい?」
後ろから聞こえた声に振り返ると、蓄力石を手に持って淡い光をつけているお父さんがいた。