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クリスタさんに案内されたのは王宮の奥のほうにある一つの部屋だった。
「こちらです」
鍵を開けたクリスタさんが扉を開けて中へと促してくれるので先に足を進める。
中の様子に思わず声がもれた。
広い室内は壁一面、額縁に入れられた肖像画がズラリと並んでいた。
「すごい……」
「歴代の国王様の肖像画です。絵の下にあるプレートにはお名前と国王であられた年が書かれていますよ」
「お好きにご覧になって下さい」とクリスタさんに笑顔で言われ、私は年代が遠いものから見ることにする。
一番遠い年代のプレートを探して文字を追って見つけ、顔を肖像画へと上げた。
この人が初代様……?
初めて知る初代様の姿に目を見張る。
国王様の姿はルニコ様の肖像画のみ現在の教科書にのせられているから。
人の姿でありながら肌は白い蛇の鱗で覆われ、目は真っ赤で瞳孔は縦に細長い。
人の姿をとりながらも蛇神様だということが私でも分かった。
それから数代移動すると白銀の髪に赤い目、白い肌と共通の容姿を持つ姿になっている。
最後に現国王、ルニコ様の肖像画にたどり着く。髪と目、肌はシン様と同じだけれど、つり目がちな顔立ちはシン様よりもルーチェ様のほうが似ているみたいだ。
「ルニコ様のお顔立ちはルーチェ様に受け継がれているそうですよ。シン様はフィオン様似だそうです」
後ろに控えているクリスタさんの言葉になるほどと思う。お父さんが言うにフィオン様は容姿の通り優しい人だったそうだからシン様もそうなのかもしれない。
一通り見たので部屋を退出するとクリスタさんはしっかりと施錠した。
「私が入ってもよかったのでしょうか……?」
普段鍵がかけられている部屋に入ったことを今更ながら気がかりになって聞いてしまう。
けれど心配は無用とばかりにクリスタさんが「ご安心下さい」と笑った。
「ルニコ様から許可をいただいています」
よかったと胸をなで下ろす私の首もとに視線を向けたクリスタさんが笑みを深める。
「指輪を気に入っていただけたようで嬉しいです」
クリスタさんの言葉にシン様がクリスタさんの実家で宝石などの加工業をしていると言っていたことを思い出す。
シン様からもらった指輪はチェーンに通して首から下げていた。
最初は首に違和感があったけれど今はもう慣れている。