シン様のもとに毎夜話をしに行くこと数ヶ月。その間で気になっていることがあった。
 毎月だいたい一日だけ報告をお休みする日があって、その日はシン様が朝に部屋を訪れてきて「今日は時間がとれそうにないから話は明日聞かせてね」と伝えていく。
 最初は忙しいのかなと思うだけだったけれど、何故かその日の夜になるとルーチェ様がリィちゃんと一緒に部屋に遊びにくる。
 仕事はと聞くと上手くかわされてしまって謎が深まっていくばかり。
 今日も朝食をとって間もなくシン様がやってきた。

「おはよう」

「おはようございます」

 朝から穏やかな笑顔に少し頬が熱くなりながらシン様の様子を見る。
 うーん。よく見ると顔色がいつもより悪い気がする……。

「どうしたの?」

 私がじっと見ていたからかシン様が首を傾げて聞いてきた。
 私は意を決して口を開く。

「あの、どこか具合が悪いのですか? いつもより顔色が悪いようですが……」

 私が問いかけるとシン様の表情が強張った。けれど、それはほんの少しの間で笑顔に隠れてしまう。

「そうかな? 仕事の量が多くて少し疲れているのかもしれないね。心配してくれてありがとう」

 「今日の話は明日聞かせてね。楽しみにして仕事を頑張るから」と頭をなでられて照れてしまいながらも、胸にはモヤモヤとしたものが広がった。


***


 午前中、何となく王宮の中を見て回ろうと思った私はメイさんに王宮内を散歩してくると告げて部屋を出る。
 メイさんも一瞬にと言ってくれたけど、急な仕事ができてしまったと呼びにきたクレアさんと共に去ってしまった。
 それから間もなくメイさんの代理としてきたのがクリスタさん。丁度仕事がひと段落して時間が空いていると言ってくれたので同行をお願いした。

「カルドーレ様は王宮内を覚えられましたか?」

「実はそれがあんまり……。よく行く所以外は覚えきれていません」

 最初の頃にメイさんに案内をしてもらったけれどよく行く場所以外は覚えきれていなくて。そのため行動範囲は限られていたりする。
 廊下を歩きながら考えるような仕草をしたクリスタさん。やがて思いついたようにパッと笑った。

「それでしたら一つのお部屋にご案内します」