せっかくきたのだから楽しんでほしい。
 そう思いをこめて言えば、リィちゃんは近くのお店を指差した。

「それじゃああそこに行こう! 甘い匂いがしておいしそう!」

 早く早くと急かすリィちゃんに目を細めながらお店へと歩いて行った。

「カルちゃん一年ぶりだねぇ」

 毎年見慣れた顔のおじさんが目尻に皺を作って穏やかに笑う。
 このお店――飴屋の露店を出しているおじさんは私が小さい頃から知っている人で、毎年買わせてもらっている。

「今年は新しい友達が一緒かい?」

 隣にいるリィちゃんを見たおじさんに「はい!」と返すとリィちゃんが「カリーナです!」と元気に挨拶をした。

「そうかそうか。新しい出会いはいいもんだ。おじさんのことは飴じじとでも呼んでくれ」

 「飴じじ……?」と首を傾げるリィちゃんに思わず苦笑い。
 実は私もこのおじさんの名前を知らない。まわりの大人は知っているみたいだけど何故か面白がって教えてくれないので、時に私は飴おじさんと呼んでいる。

「おじさん、小さいりんご飴を二つお願いします」

「はいよ。りんごの小二つね」

「ありがとうございます」

 お金を払って二つのりんご飴を受けとる。
 おじさんと別れの言葉を交わし、お店から少し離れたところで一つをリィちゃんに手渡した。
 おじさんのお店のりんご飴は小だと本当に可愛いくらい小ぶりで食べやすい。
 りんごのまわりの飴は着色されてツヤツヤで綺麗なものだ。

「甘くておいしい!」

 少しの間飴を眺めたリィちゃんはペロリと一舐め。
 私も端のほうを一口かじる。変わらない味が懐かしく感じる。
 リィちゃんは一心に舐めたりかじったりを続け、私より先に食べ終わってしまった。
 急いで食べ終えると手を引かれ、足をもつれさせながらもついて行く。
 今度は的当て屋さんのようだ。
 女の子が好きそうな可愛いものから男の子が好きそうなものまで色々な景品が置かれている。

「これやってもいい? 面白そう!」

「いいよ。それじゃあどっちが多く得点をとれるか勝負しよう?」

「うん! リィ負けないからね」

 強気なリィちゃんに少しおされながら二人でお店のお兄さんにお金を払う。
 的には点数が書かれていて真ん中に近いほど点数が高い。
 合計点数が高いと景品が豪華なものだった。