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「カルちゃん! お祭りに行こうよ!」
あれから数日少し寂しい気持ちを引きずっていたら、扉を勢いよく開けてきたリィちゃんに体がはねる。
リィちゃんはニコニコと嬉しそうな顔でソファーに座っていた私の前までくるとギュッと手を握ってきた。
「ルーチェ様とシン様がね、息抜きに二人で行っておいでだって!」
「お小遣いももらったよ」と財布を見せるリィちゃんにポカンとしてしまう。
お祭りは今日と明日の開催だけれど、まさかそう言う話になるとは思わなくて。
「カリーナ様……っ、足がっ、速すぎます……!」
息を切らせたメイさんが遅れてやってきて詳しい話を説明してくれた。
シン様の水質調査でアックア地区に一緒に行ったきりの私達を退屈しているだろうし、王宮にばかりいては息がつまるだろうと思ってくれたそうで。
今日明日に催される夏祭りに出かけてみてはと提案されたそうだ。
「わたしもお供しますし往来はトリステ様がお送りして下さるそうです。護衛も兼ねて下さるそうですよ」
行こうと笑顔で誘ってくれる二人に私はコクリと頷いた。
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馬車は少し離れた場所にある停車場に停められ、私とリィちゃん、それにメイさんとお父さんは歩いて会場へと向かった。
馬車は二台できたのでもう一人の運転手さんが馬を見てくれるということでお願いして。
ずっと待たせて大丈夫なのかお父さんに聞いたところ、「彼はお祭りよりも馬と触れ合っているほうが好きみたいなんだよ」と眉を下げて笑った。お昼にはメイさんがご飯を届けることになっているみたい。
「うわぁーすごいねー!」
会場の大広場にたどり着くと午前中でもすでにたくさんの露店が並んで人であふれていた。
辺りをキョロキョロと見たリィちゃんが目をキラキラさせて頬を赤くして興奮している様子。
馬車の中で話を聞くとリィちゃんはポルタ地区出身で、クオーレ地区のお祭りにくるのは初めてみたい。
「どこから行く? たくさんあって迷っちゃうよ」
あれもこれもと迷うリィちゃんの様子に笑みが浮かぶ。
私が小さい時にきていた時も同じような様子で、お母さんには「勝手に歩いて迷子になるんじゃないよ!」と注意されていたんだよね。
「私はどこからでもいいよ。リィちゃんの行きたいところをいっぱい回ろう?」