楽しいことやついてないこと、私が色々なことを話すとシン様は時々相づちをうちながら最後まで聞いてくれる。
 最初は仕事の邪魔になると思いほとんど話せなかったけれど、「カルのことを知りたいな」とシン様の特徴である優しい笑顔で言われてしまい何日かの間で自然と話す内容が増えている。

「紅茶とケーキはシン様のおすすめだと聞きました。すごく美味しかったです」

 味を思い出して頬がゆるみながら話せば「それはよかった」と返してくれた。

「両方とも僕が小さい時から好きなお店のものなんだ。気に入ってもらえて嬉しいよ」

 「今度また違う種類をごちそうするよ」と言われて嬉しくなって思わず「はい!」と大きな声で返してしまった。
 クスクスと笑われて顔がカァッと熱くなる。

「申し訳ございません。大きな声を出してしまって……」

「ううん。いいんだ。女性で甘いものが好きな人は多いだろうからね。喜んでもらえて何よりだよ」

 それからもポツリポツリと話を続けそろそろ終わりかなと思っていると、執務机から離れたシン様が私の座っているソファーのもとにやってきて隣に腰かけた。

「指輪のことなんだけど……。指にはめなくてもいいから持っていてほしいんだ」

 横にいる私の左手に触れたシン様が小さな箱を渡してきた。
 角が丸みを帯びた箱の中はシン様の言葉から察することができる。
 開けるように促されてそっと開けると、細身のリングの中心に桃色の宝石が一つ。そしてそれをはさむように赤色の宝石が両側に一つずつはめこまれた指輪が収まっていた。