私の気持ちが分かるまで待ってくれるとシン様は言ってくれて、今もお世話になっているけれど。
曖昧な状態で指輪という大事なものを受け取れないから……。
「うーん。カルちゃんって真面目だね。リィだったらそこまで深く考えないでもらっちゃうけど」
「そんなことないです……」
再度ケーキを一口食べて考えこむカリーナさんの様子を見守りながら、紅茶をもう一口。
広がる香りとしみる温かさにホッとして体の力が抜けていく。
「リィじゃ上手く言えないけど、シン様が形だけでもって言うならもらったほうがいいと思うよ。リィがルーチェ様からプレゼントされて受け取るとすごく嬉しそうな顔してくれるの!」
「きっとシン様もカルちゃんが受け取ってくれたら嬉しいと思う!」と明るく笑うカリーナさんにぎこちなく頷いて返す。
「でも、指輪なんて高価なものを受け取っていいのでしょうか……?」
「シン様がカルちゃんにあげたいって気持ちだからいいと思うよ。――ところでいつまで敬語なの? リィ達同い年なのに!」
指輪の話は終わったとばかりにカリーナさんが頬を膨らませて怒る。
試験期間の間はほとんど話すことがなかったけれど、その後話すようになってカリーナさんが同じ年ということを知った。
カルちゃん、とニックネームで呼んでくれるので友達みたいですごく嬉しいけど敬語がなかなか抜けなくて。
「ごめんね。つい癖で……」
「なんかリィだけ気軽に話しかけてるみたいで寂しいんだからね!」
「名前もリィって呼んで?」と首を傾げて可愛くお願いしてくるカリーナさんに、「頑張るね」と返してお許しをもらいその後相談へのお礼も言った。
それから夕方近くまで色々な話をして、楽しい時間を過ごすことができた。
***
「それじゃあ午後からはカリーナとお茶会をしたんだね」
「はい。楽しい時間が過ごせました」
夜も仕事をこなしていたシン様のもとを訪ね、今日のできごとを話す。
多忙なシン様とは一緒にいる時間が少ないので、夜にシン様のもとを訪ねて一日あったことを話すのが日課になっていた。