「ねー!」とカリーナさんと笑い合うルーチェ様。
 後ろにはラナさんとティアさんもいて困ったように笑っている。

「そうなんですか……?」

 扉のほうに向けた顔をシン様に向ければ笑顔のまま。
 けれど細められた赤い瞳に今まで見たことのない何かが宿っているようで少し怖くて。

「君は僕を優しい人間だと思っているみたいだけれど、本当は嫉妬深くて独占欲が強くて。目的のためなら手段を選ばない酷い男なんだ。けれど、君のことを大切にしたい。守ってあげたい。この気持ちに嘘はないよ。神様に誓って言えるから」

「でも私は……っ」

 向けられる気持ちに答える言葉を持っていない。
 うつむくと体を離され、肩に手の重みを感じた。

「君の答えが出るまで僕はずっと待っているから。だからこれからもそばにいてほしい」

 「ダメかな?」とあまりにも優しくて綺麗な表情で笑ってくれるから。
 胸に微かな温もりを感じながら、私は「よろしくお願いします」と返してしまうのだった。

 それからみんながシン様の部屋にわっと入ってきて大騒ぎになって。
 遅れてやってきたメイさんが「やっぱり帰らないで下さいー!」と泣き出してしまったり。――計画がバレてしまうとしてメイさんだけは唯一計画を知らなかったそうで、そのことを知ってさらに泣いたり。
 ルーチェ様の婚約者がカリーナさんで驚いたり。
 しばらく賑わいに囲まれながらこんな賑やかな生活も悪くないかもしれないと、シン様と笑い合いながら胸の中で思うのだった。