蛇神王子と泣き虫娘


 王子様方相手に涙をボロボロ流して声を張り上げるなんて怒られるかもしれない。でも言わずにはいられなかった。
 シン様は何も言わずに涙をハンカチで拭ってくれる。

「あれはボクもビックリしたよ! 打ち合わせと力加減が全然違うんだもん」

 「ボクじゃなかったら今頃あの世行きかもねー」と明るく言うルーチェ様に背筋が寒くなる。
 シン様は動かしていた手を止め、顔をしかめて私の横に立つルーチェ様を見た。

「ルーチェ……」

「そんな顔したってダメだよ兄さん。このコがボクの部屋にいたから妬いたんでしょ?」

 「あの顔は見ものだったよ!」とケラケラ笑うルーチェ様と額に手をあてるシン様が対照的で見比べてしまう。

「それで? 結局両思いになったの?」

 笑いを引っこめたルーチェ様は目を弓なりにして、興味津々と言った様子で今度はシン様の横へと歩いていく。
 「ボクが協力したんだから上手くいったんだよね?」と言うルーチェ様に私は首を傾げた。

「あの、どういうことですか……?」

「えー! まさか兄さん上手くいってないの!」

 「何やってんのさ!」と騒ぎ出したルーチェ様の腕をつかんで引きづるように歩き出し、シン様はルーチェ様を部屋から出してしまった。
 鍵を閉め、「兄さん! 兄さん!」と部屋の外で扉を叩くルーチェ様に構わずにソファーに戻ってくる。

「騒がしくてごめんね」

「いえ……」

「――君が部屋にくる前にラナから聞いたんだけど、あのペンダントは僕に似ているからって買ってくれたんだってね」

 「壊したりしてごめんね」と頭を下げるシン様に驚いた。

「頭をあげて下さい! 私こそすみませんでした。勝手にシン様とペンダントを重ねてしまって――」

「僕が怒ったのはそういうことではないのだけど……」

 困ったように笑ってシン様は言葉を続ける。

「君がお店の男と楽しそうに話しているのを見て、その男に買ってもらったのかと勘違いしていたんだ。そう思ったら――嫉妬してすごく腹が立った」

 「ここまで言っても分からない?」と首を傾げられてどうすればいいのか分からなくなる。
 私がミレさんと話しているのを見て嫉妬した、だなんて勘違いしてしまいそうで。