次の日になってもシン様は目を覚ましていないとメイさんから伝えられた。
 また、地下へと連れて行かれたルーチェ様について、処罰などは国王様やシン様が決めるため詳しいことは教えてもらえないとも伝えられた。
 ルーチェ様のこれからは国王様達に委ねられていると知り、私は部屋を片づけて荷物をまとめ終える。
 辞退を待っていた理由はなくなったから。
 王宮内は昨日のことで混乱しているのか辞意を伝えたい国王様の時間の空きがなく、お父さんに代弁をお願いすることにした。
 「本当にいいのかい?」と何度も聞いてくるお父さんはとても残念そうな様子だったけれど、辞退するのは最初から決めていたことだから気持ちは変わらない。
 メイさんにだけは伝えておこうと言ったところ、「信じられませんー!」と叫びながら部屋を出て行ってしまって戻ってこない……。
 ソファーに座り、テーブルに置いていたブレスレットを手に取る。
 小さな月の飾りがついたブレスレット――これは壊れてしまったペンダントの部品をできるだけ集め、製造能力で作り直したものだった。
 力の具合と部品の欠損で元通りにはならなかったけど、銀色と赤色が混じった色合いの月も綺麗だと思えて。
 ――けれど家に帰る私には必要のないもの。シン様の所へ置いていこう……。
 早く置いてこようと思い私は一人で部屋を出た。


***


「失礼します……」

 廊下にいた人づてにシン様の寝室を聞いて何とかたどり着く。
 入り口前にいた護衛の人に話して入室許可をもらう。
 小声を出しながら綺麗な扉をそっと開けて中に入らせてもらうと、中は広いけれど家具などはシンプルな印象を受けて驚いた。
 できるだけ音をたてないように奥に進むとベッドで眠るシン様の姿があり、静かな息づかいが聞こえる。
 布団に隠れている体には傷が残っているかもしれない。そう思うと泣きそうになるけどグッと我慢。
 ペンダントを引きちぎられた時は驚いたし怖かった。けれど、慣れない私に優しく接してくれたことはすごく嬉しかったから――。

「短い間でしたけど、本当にありがとうございました……」

 綺麗な寝顔にそっとつぶやいて、ブレスレットは枕元に。
 窓から聞こえる雨音を耳に入れながら頭を下げた。
 ――二度とない時間をありがとうございました。そう思いながら下げた頭を上げた瞬間、腕を強くつかまれて体がはねる。