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 部屋で昼食をとり終え、一休みしていると興奮した様子のメイさんが部屋に入ってくる。

「カルドーレ様! そろそろ王子様方の模擬戦闘が始まりますので鍛練場へまいりましょう!」

 「公開式なのでシン様のご勇姿をお近くで見られますよ!」と笑顔で勢いよく私の腕を引くメイさん。
 行きたい気持ちと行きたくない気持ちが私の中でグルグルと回っている。
 もう一度シン様に冷たい目で見られたら、きっと耐えられず大泣きしてしまう。けれど、行かないことでシン様に何かがあるのはもっと耐えられなくて。
 歩みを止めて迷う私を見たメイさんは引いていた手を緩め柔らかく笑った。

「カルドーレ様がシン様と何かおありだということはわたしにも何となく分かります。――ですが、このまま仲違いをしたままですとわたしは悲しく思います。カルドーレ様もシン様も大切なお方ですから笑ってほしいのです」

「メイさん……」

 「カルドーレ様のお気持ちを伝えたらきっとシン様も分かって下さいます」とメイさんは優しい声色で励ましてくれて。
 その言葉に少しだけ勇気が生まれ、お母さんがよく言っている言葉を思い出した。
 私が迷う度に言ってくれる。「やらないで後悔するより、やって後悔するんだよ!」って。
 「まいりましょう?」と促すメイさんに片手で目尻を拭いながらコクリと頷いた。


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 鍛練場に入ると中は熱気が漂い、独特な雰囲気が流れていた。
 真ん中にシン様とルーチェ様が距離を置いて向かい合い、それぞれの手には立派な剣が握られている。
 二人を取り囲むように観る人であふれていた。
 私はメイさんに連れられて人の間を通り、シン様の近くの位置におさまる。
 私の近くにはカリーナさんとティアさんもいて、瞳が輝いているようだった。

「ラナさんはきていないみたいですね……」

 私が聞くとメイさんは眉を下げて悲しそうな表情を浮かべて頷く。

「まだ体調が万全とはいかないみたいです」

 「早く治るといいですね」と二人で話しているとシン様が話し出したので、会話を止めて部屋の中心を見た。

「珍しいね。ルーチェが模擬戦闘で真剣を使いたいだなんて」

「たまにはいいでしょ? 本物っぽくてさ!」

 二人で交わされる会話に耳を疑った。
 模擬戦闘なのに本物の剣を使うの……?