「カルドーレ、久しぶりだね!」
運転手の男性は私を見るなり満面の笑みで話しかけてくる。
オールバックに整えられた茶色の髪に軍服。きちんとした服装に王宮からきた人だと分かるが、それは意外な人物で。
なんと馬の手綱を持った運転手はお父さんだった。
「王様と王子様に許可をもらって父さんが迎えにきたぞ」
くしゃくしゃな笑顔で話しかけてくれるのはすごく嬉しい。お父さんは王宮で働いているからなかなか家には帰ってこられない。だから会えるのはすごく喜ばしいのだけど……。
「なんだい。あなた馬車を扱えたのかい」
私の隣でお母さんが感心したように言う。お母さんも知らなかったんだ。
「ソーレも久しぶり。元気だったかい?」
お父さんが穏やかに話しかけるとお母さんはふんと鼻を鳴らした。
その様子に私とお父さんは視線を合わせて笑う。お母さんが鼻を鳴らすのは照れた時の癖だから。
「まあまあ元気でやってるさ。そっちこそ体壊すんじゃないよ」
頬を緩めたお母さんが聞き返す。
穏やかなお父さんと男勝りのお母さんがどうやって出会って恋に落ちたのかは知らないけれど、この二人の仲は変わらずいいみたいで密かに安心する。
そう思っているうちに二人の会話が終わったみたいで、私に馬車に乗るようにとお父さんが促した。
馬車に乗るために馬の近くを通るとじっと見つめられたので立ち止まる。
「綺麗な馬だろう? おとなしいから触ってごらん」
お父さんに促されて腕を伸ばせば、馬が頭を低くしてくれた。そっと撫でてみると馬はおとなしく撫でさせてくれたので少しの間感触を味わう。
心なしか目を閉じかけているように見えて可愛い。

