「君はここで他の人を待って、着いたら説明をお願いできるかな?」
「はい! ラナさんをよろしくお願いします……っ」
「まかせて」と言ってシン様はラナさんを抱きあげたまま王宮へと入っていった。
いつの間にか馬車は二台ともいなくなっていたので、私は入り口近くで他の人を待つ。
ラナさんが無事であるようにと、ペンダントを握りしめた。
***
みんなが王宮に着いて事情を説明をした後はその場で解散となり、私は部屋へと戻ってきた。
隣の部屋がずっと気になって晩ご飯は部屋で食べさせてもらって。
その後はラナさんの部屋の近くをずっとウロウロしてしまった。
「カルドーレ様、お疲れでしょうからお部屋でお待ち下さい。カルドーレ様まで体調を崩されては大変です」
心配そうなメイさんに申し訳なくて、私は部屋へと戻る。
「わたしがかわりにお聞きしてきます!」と頼もしく部屋を出て行ったメイさんの帰りをじっと待つ。
外は雨が降り始め、雨が窓にぶつかる音が微かに聞こえている。
やがてノックの音が聞こえ、「どうぞ」と返すとシン様が部屋へと入ってきた。
シン様はラナさんのところにずっといたのか出かけた時と同じ服装だ。
「心配をかけてごめんね。だいぶ落ち着いたからもう大丈夫だよ」
「メイには僕から伝えると言っておいたから」と笑顔のシン様に一安心。
よかった。
ソファーに座っている体から力が抜けるのを感じる。
横へと腰を下ろしたシン様は何故か私のほうをじっと見て無言になった。
「シン様? ――!」
じっと見ていたかと思うとシン様は急に距離を縮めて近づいてくる。
「――気に入らないな」
「え……」
低く絞り出すような声に一瞬誰が話したのか分からなくなる。
けれど今この部屋にいるのは私とシン様しかいなくて。
「このペンダント外してくれないか」
低い声のまま続けられ、シャラ、と涼しい音にペンダントに触れられていることに気づいた。
シン様は次いでペンダントトップを引っ張り、外すようにもう一度聞いてくる。
でも私は外したくなかった。シン様に似ているこのペンダントを言われるままに外したら、シン様の拒絶を受け入れてしまうようで悲しくて。
迷う私に息を吐いたシン様の目は氷のように冷たい光を放った。