「僕は水質調査を兼ねているけれど、みんなは地区内を歩いてみるといいよ」
「アックアは緑が多いし、クオーレとはまた違うお店もあるからね」と穏やかに言うシン様に私達は弾んだ声で頷いた。
少し離れたところにいるカリーナさんとティアさんも嬉しそう。
考えてみると王宮の側から離れたのは久しぶりなんだよね。色々あってあっという間だからなぁ……。
ルーチェ様は王宮内で仕事があるから一緒にきていないし、シン様の護衛にはお父さんもきているから安心。
今日はゆっくりできそうで体の力が抜けるのを感じる。
「行きましょう」と手を引いてくれるラナさんに笑顔で頷いた。
***
「カルドーレさんはシン様のことをどうお思いですか?」
歩き疲れた私達が広場と思われる場所にあったベンチで休憩していた時のこと。
後ろに控えているルーナさんから飲み物を受けとり、一口飲んだラナさんがそう言ってきた。ちなみに、メイさんは王宮内でどうしてもすませなければいけない仕事があるそうでここにはいない。
突然の質問にラナさんに次いでルーナさんが渡してくれたカップを持ったまま固まってしまう。
「あの……どう、とは?」
隣に視線を向けると、頬をほんのり赤く染めたラナさんが遠くを見ているような表情をしている。
「私、両親の繋がりからシン様とお会いすることがありますけれど、お優しい方でしょう? ご自分を犠牲にされても仕事に励まれていて胸をうたれます」
「あの、シン様は蛇神様の血や力を受け継がれても数日前のようによく体調を崩されるのでしょうか?」
気になっていたことを聞くとラナさんは伏し目がちになって悲しそうな横顔を作る。
「前に聞いたことがあります。神様の血や力を持っていてもやはり人の身。常に万全とは限らないそうです」
「そうなんですか……」
「ええ。だからいつも心配しています。シン様は大切な人ですから」
目を細めた横顔が悲しそうなものから違うものに変わったように見えて私は何も言えなくなる。
ラナさんはすごくシン様のことを思っているんだ……。
「ラナ様」とルーナさんが呼ぶとラナさんはハッとしたように私を見て笑った。
「私ばかり話してしまってごめんなさい。カルドーレさんはシン様をどうお思いですか?」