ルーチェ様は立ちあがった姿勢のままこちらをじっと見ている。
 どうすればいいの? シン様に知らせるべき?
 ――ダメだ。私の言葉より弟であるルーチェ様の言葉のほうが信憑性がある。
 私にできるのはシン様の盾になるくらいしか――。
 悩んでいるとルーチェ様がクスリと小さく笑い声をもらし、意識が現実へと戻ってくる。

「もしかしてボクと戦おうとしてる? それなら止めときなよ。非力なキミじゃボクに傷一つつけられないから」

「あ――」

 「交渉決裂だね。まあせいぜい兄さんがボクに殺されるのを近くで見てるんだよ」と言い残しルーチェ様は足早に部屋を出て行ってしまった。
 その後呆然とベッドに座っていると様子を見にきてくれたメイさんに安心して泣き出してしまい。
 慌てるメイさんに言えたのは「明日の治療はお父さんにしてほしい」だった。
 首をひねりながら頷いてくれたメイさんに抱きつきながら、頭の中はグチャグチャで。
 これからどうすればいいんだろう……。
 私は大変なことに巻きこまれてしまったのかもしれない――。