「ティアさんって私のお母さんに似てます。厳しいけど優しいところもあって……」

「ちょっと止めてよ! あたしまだ十八なんだから」

 顔を赤くして慌てだしたティアさんを見て頬が緩む。
 冷たい言い方に怖い人かと思ったけれど、それだけじゃなかったみたい。怪我は痛いし苦しいけど、そのことを知れてちょっと嬉しくなった。

「――っ、あたしもう部屋に戻るから……!」

 「治療する人がくると思うからおとなしく寝てなさいよ!」とティアさんは足音を立てながら部屋を去って行った。
 ……おとなしくって言われても動けないのに。

 枕に顔をうめるようにしてじっとしていると、色々なことが頭に浮かぶ。
 シン様はよくなったのか。お母さんは元気にしているのか。
 シン様にお礼言えてないままだな……。
 それからどのくらい経ったのかは分からないけれどじっとしていた。
 熱でぼんやりしていたからか、背中に何かが触れる感覚がして体がはねる。

「痛……っ!」

「! ごめん! 寝てると思ったから――」

「ルーチェ様……?」

 痛みに涙を浮かべながら枕にうめていた顔を横に動かす。
少し前にティアさんがいた所にいつの間にかルーチェ様が立っていた。

「寝てると思ってこっそり入ってきたんだけど、ビックリさせてごめんね?」

「いえ……大丈夫です」

 ボーッとしてたからか全然気づかなかった。
 ルーチェ様は眉を下げて困ったような笑みを浮かべて、もう一度私の服ごしの背中に触れる。
 痛みを感じないくらいに触られて一定の場所に手が置かれた。

「……うん、痛いのはこのへんかな?」

「はい。ルーチェ様には場所が分かるんですか?」

「こう見えて回復能力を使えるからね。――リタが足をずらして乗りあげるのは防げたみたいだ。それでもけっこう重そうだから一回では完治させてあげられないと思うけど……」

 私が回復能力を使うのはすり傷や切り傷、軽い打ち身や発熱などがほとんど。重そうなものは治しきれないし私一人では心配なので、少し痛みをとるなどをして他の人にお願いしていた。
 能力に個人差はあっても、王族であるルーチェ様でも治しきれないことがあるのかと疑問に思う。