そういえば国内の水の管理はルニコ様とシン様を中心に行われているんだっけ。
 適度に雨を降らせることもされているとお父さんに聞いたことがある。だから、嵐や大雨が起きるのはルニコ様やシン様によくないことがあった時なんだとも聞いている。蛇神様の力ってすごいんだな……。
 感心していると再び髪に触れられる感覚に横を見た。

 するとそばにきていたシン様が私の髪をすくい、じっと見ていて驚く。
 私の髪は茶色で珍しい色でもないのになぜだろう……。
 シン様は指先を毛先へ動かしてやがて髪から離すとふと笑った。

「綺麗な髪だ。この色はトリステさん譲りかな? でも瞳は違うようだね――お母さんかな……?」

「ん……」

 目元まわりに触れられ、冷たさに目を閉じてしまう。
 すぐに開けば赤い色の目と合った。

「まるで花月の花のような薄桃色だね。花月の花は小さくて可愛いから君の印象にも合う」

「それは花に申し訳ないです……。――シン様の瞳は赤く輝いて見えるから宝石のようですね」

 光に照らされて綺麗な色が夜でも見える。――と思っていたらシン様の顔が近づいてきた。

「シ、シン様……!」

 恥ずかしさに耐えられず顔を横にそらすと「ああ」と残念そうな声が聞こえた。

「もっと近くで目の色を見たいと思ったんたけど……。そんなに真っ赤で泣きそうな顔をされてはしかたがないね」

「あ……」

 「今日はこれで失礼するよ」と足音を響かせて出口に向かう姿に私は立ちつくしたまま動けない。
 王子様を相手に失礼な振る舞いをしてしまっただろうか。考え出せば悪いことしか思い浮かばない。

「そんな顔しないで? 今日も話せて嬉しかったよ」

 扉を開けたシン様がこちらに振り返って言った言葉に力が抜けていくのを感じて。
 「おやすみ」の言葉に「は、はい……」と返すので精一杯だった。