――国内の主要地区を答えなさい。

 行ったことのない地区もあるけれどこれも覚えてる。
 まずは国の中心であるクオーレ地区。色々な施設があって製造業が盛ん。
 ヴェルデ地区は農業が盛んで、マーレ地区は漁業が盛ん。
 オアジ地区は医療に優れた人が多くいて、ポルタ地区は他の国との出入り口の役割を担っている。
 ――うん。主要地区はこの五つのはず。

 この後も色々な問題を解いていき、三分の二は過ぎたかなと思ったところで質問の内容が明らかに変わった。
 思わずペンの動きが止まってしまう。

 ――使用可能な能力は?

 あれ……?
 これって就職の時に書類に書いたりする内容では?
 国内では色々な職業があるけれど、主に職業に合う能力を持つ人がその職場で働いていることが多い。
 お母さんのように自分でお店を営む人も自分の得意な能力を使うことがほとんどで。
 ……能力を使うのは苦手だけどとりあえず書いておこう。製造と回復、と。

 一通り答えた結果、残りは自己紹介文のような質問だけだった。
 試験に関係あるのかと困る質問もあったけど念のため書いておく。
 ペンを置いて思わず背伸び。意外と長い間同じ姿勢をとっていたみたいで体が固くなっている気がした。

「もうお済みになったんですか!」

 メイさんの驚いたような声に椅子に座ったまま振り向く。
 メイさんはいつの間にか持ってきていた椅子に座り、雑巾を縫っていたようだ。
 メイさんの近くに置かれた袋にたくさんの縫われた布が入れられている。

「午後からも時間をあてていたのですがお早いですね」

 「どうしましょうか……」と首を傾げる彼女に、私はまだ縫われていない布を指差した。
 布はまだたくさん残っていて、メイさん一人だと大変だと思う。

「もしよかったら私にも縫わせて下さい。時間がかかるのでそんなに力にはなれませんが……」

「そんな! 試験を受けられる方にお頼みできません。これはカルドーレ様が筆記試験を受けられている間に作業するよう、まかせられたものですから」

 「それに、クレアさんに知られたら大目玉ものです」と慌てるメイさん。
 そんなに怒ったクレアさんは怖いのかなと想像して途中で止めた。
 美人な人が怒ったらそれはそれで迫力がありそう。

「もっ、もうそろそろお昼ですから昼食をお持ちします! 答案用紙は届けてまいりますね」