「泣かないで下さい。私は感謝しているんです。――私は幼い時から体が弱く、疲れたり環境の変化などでよく熱を出したりしてしまうんです」
ラナさんはそう話しながら私の左手をそっと握った。温かくて柔らかな手の感触によけいに涙が出てしまう。
すると今度は水色のレースがついたハンカチをそっと目元にあててくれた。
「今日も熱くて息苦しさを感じていたら急に楽になりました。ほんのり温かく体に染みるような感覚に、どなたかが回復の力を使って下さったのだと分かりました」
「だからありがとうございます」と言って微笑むラナさんに私は首を横に振る。
「できるなら熱をしっかり下げてあげたかったんです。でも私の回復能力は低くて、重い怪我や病気、生まれつき起きやすい症状などは軽くすることしかできません。だからお礼を言われるようなことではありません……」
「いいえ。回復の程度ではありません。私のことを思ってして下さったことが嬉しいのです」
「ですから、私の気持ちをどうか受けとって下さい」と微笑む姿が包みこんでくれるみたいで。
涙を拭いてもらいながら頷いた。
――それからはメイさんが戻ってくるまでの少しの間だけ、話に花を咲かせるのだった。