しばらくして向けていた手を下ろせば、頬が少し赤いものの大分呼吸が落ち着いた様子で一安心。

「――カルドーレ様?」

 これからどうしようかと考えていたら聞こえた呼びかけに私は辺りを見回した。
 するとラナさんが出てきた部屋と反対の部屋の近くに、メイさんと初めて見かけるメイドさんが立っていた。

「メイさん、人をさがしていたのでよかったです。ラナさんの具合が悪いみたいで……」

 私が体をずらしてラナさんの様子を見せると二人はすぐに駆け寄ってきてくれる。

「大変です!」

 「ルーナさんどうしましょう!」と慌てるメイさんとは反対に、もう一人のメイドさん――ルーナさんはしゃがんでラナさんの額に手をあてたりして様子を見ている。

「メイさん落ち着いて下さい。ラナ様は少し熱がある以外は大丈夫なようです」

 後ろで緩くまとめられた銀色の髪を揺らして立ち上がり、金色の瞳で見るルーナさんにメイさんは大きく息を吐き出す。
 ルーナさんの慣れたように見える様子や、急いで指示などがないところをみると本当に大丈夫みたいで私もホッと息を吐き出した。
 ――間もなく気がついたラナさんはルーナさんに連れられて部屋へと戻って行き、私とメイさんはその場で見送ったのだった。


***


「申し訳ありませんでした……」

 王宮内を案内してもらえることになり、廊下を歩いているとメイさんが落ちこんだ様子でそうもらした。
 ラナさんのことがあったから丁度メイさん達がきて助かったけれど、それがなければ人が近くを通るまで待っていただけだから構わないのに。
 それよりもクレアさんに連れていかれたメイさんのことが心配だった。
 この様子だと辞退のことはもう少し後に話したほうがよさそう……。

「ラナさんのことは丁度きていただいて助かりました。でも、私のことよりメイさんは大丈夫でしたか?――その、クレアさんは怒っていたみたいでしたが……」

 私が聞くとサッと顔色を悪くして立ち止まるメイさん。これは聞いたらまずかったかな……。
 前で手を組んだメイさんが眉を下げて笑う様子に違和感を覚えてしまう。

「お恥ずかしながらクレアさんにお叱りを受けてしまいました。お仕えする方に抱きついたり大声をあげるなんて何事かと……」